メンバー:(L)NY.OS
コースタイム 5:30クロステン~6:30林道車止めP~7:30左俣出合~9:30三ツ釜
~13:00林道~14:30駐車場~16:30クロステン
ある日、我が山の会の中枢を担う会員2名の大怪我の快気祝いが、会員が店主として腕を揮う寿司割烹で宴じられた。
冷酒をいただき過ぎてかなり酩酊した頃、沢登りと雪稜の大先生、N先輩(歳はひと回りも若いが)から、
突然「ヤド沢」に行かないかとのお誘いをいただいた。
「ヤド沢」は、みちぐさに沢登りを教えてもらってかなり経ってから、是非行ってみたい沢の筆頭だった。
しかし、なかなかチャンスが無く、体力・気力とも低下する一方の昨今、もう無理だろうと脳裏の片隅から
忘れ去られつつあった。意識朦朧とする中での神の声に、即座に是非よろしくと反応し、心は踊り始めていた。
翌日、沢のガイド本を見ると、「3級の上」とある。振り返ってみると今まで3級の沢をほとんど登った経験が無く、
恐れおののき始める自分がいた。滝から落ちるイメージも頭をよぎったが、今更、念願していた沢を諦めたくないので、
弱気心に喝を入れながら入渓する。やや長い泳ぎがあると教えてもらっていたが、連日の猛暑で雨が降らないため、
沢の水量が今までになく少ないとのこと。水が少ないということは、沢レベルが下がって自分には好都合。
長いトロは左岸をへつり泳ぎで、比較的楽に通過することができた。しかし、要所の岩場では中村さんから
お助けひもやザイル確保をしてもらい、自分のレベルでは際どい難所を、安心して越えることができた。
標高差で650m程しかない沢なのに、前半は緩傾斜が続く。そのため、後半に(自分には恐怖の)滝が続くのだという。
今年は、魚沼の沢にはまだ雪渓がかなり残っているが、ヤド沢には3箇所程残っていた残雪が全て崩壊していて、
遡行には全く支障が無かった。ただ、三ツ釜の右を登るボロスラブの終盤、フリクションを効かせて登れるところで、
雨が少ないせいか砂や小石が堆積していてズルズル滑った。手掛かりが無いので、滑れば10m以上ある滝壺へドボンだ。
本日一番の恐怖となったものの、Nさんからのお助けひもで難を逃れることができた。
三ツ釜は、ブログや話で見聞きして憧れていたのだが、肉眼で見ると想像以上に見事な自然美渓であった。
特にヤド沢側の最上段の釜は、露天風呂のように奇麗に釜が掘られていて、
自然が造り出した神秘に感服するばかりであった。その釜にNさんが勢い良く飛び込んだが、
自分は景観美に圧倒されたり恐れおののくばかりで、飛び込む気力が生まれなかった。
ここからは、ナメと滝が交互に現れる。3段滝、15mと20mのスダレ滝、圧巻の50m滝と続くが、逃げ腰の自分の希望で、
ほとんどを高巻きさせていただいた。そのため、両腕の摩耗が激しく、翌日へのダメージが思いやられた。
最後の4段滝だけは、快適に登らせていただき、気持ちの良い遡行で締めくくることができた。
生涯、行くことが無いだろう幻と化していた「ヤド沢」の三ツ釜を拝むことができ、
お陰様で人生の宿題をひとつ解決することができた。Nさんに心から感謝・感謝である。
そして、特別長くはない沢に、かなりの疲労感を覚えたことから、
沢登りバリエーション山行も潮時が近いものと思い知らされた。OS