2013/9/20-23 念願・待望の槍ヶ岳「北鎌尾根」

    メンバー : OS (記)+2

Uさんからお誘いをいただき、念願の北鎌尾根バリエーションルートへの挑戦が実現した。
当初はテント泊行程で北鎌沢出合いに幕営する予定であったが、事前の打合せで小屋泊に変更し、荷物の軽量化を図ろうということになった。
アタック当日の行程は長くなるが、荷物が軽い方が時間短縮できるだろうという作戦である。

20:00に出発し、順調に沢渡に到着。テントを設営し、寝酒で楽しい語らいの時を過ごして1:00就寝。翌朝5:10、「すごい車だ、もう並んでいるぞ!」との声で眠気眼に外を見ると、昨夜ガラガラの駐車場が満車で驚く。急いでテントを撤収しバス乗り場へ。連休で大勢のお客のため、5時頃から臨時便が出ていたようだ。

6:10上高地着。バスを降りると、登山者や観光客でごった返している。天気はいいが気温が低く、Tシャツでは寒くて腕が冷たくなった。
どんどん先行者をかわし、8:45横尾着。その先は登山者の列は少なくなる。
槍沢ロッジに到着すると、KさんとUさんはさっそくビールで喉を潤す。自分はこの先の急坂を控えて自重。
テント場を通ると、川原の中にも数張のテントがあった。やや勾配が増し始めると、まもなく大曲りの分岐11:30着。
日差しも強くなり、ここから水俣乗越までは、けっこうな急坂で辛い登りが続く。

ジグザグに高度をあげながら、ひと汗かいて乗越12:22着。
天上沢への降り口は、その場所にあった。ひと休みしてから西岳山荘に向う。
梯子等を越えて平坦地に建つ小屋に13:40着。
西岳の山頂からは、槍~穂高連峰、後ろには大天井・常念の峰等、大展望が広がっている。ここは、絵描きの人の絶好地と聞いたことがあるが、素晴らしいところである。十分に眺めを堪能し、小屋に戻っておっつきを始める。食後にまた、赤く染まる夕暮れの景色を楽しみながらもう一杯いただき就寝についた。

さあ、今日はいよいよアタックだ。3:10起床、3:40出発。星が出ていて、好天が期待できそう。
ヘッドランプで、下りを慎重に進む。思ったほどの危険は感じずに、4:18水俣乗越へ。「さあ、いよいよだぞ」と自分に言い聞かせ、先頭で急坂を下り始める。砂系のザレた急坂で、誠に降りづらい。どんどん土砂が崩れ落ちる。
いいしばらく木につかまりながら下ると、徐々に川原に変化して、勾配も緩くなる。岩・石だらけの川原をどんどん下る。最初の左からの沢の合流点を通過。さらにしばらく進むと天井沢と合流。槍の穂が徐々に明るくなってきて、月も真上から穂先を照らしている。

少し進んで、川原が広くなった所に数張のテントがあり撤収を始めていた。
左を見ると水の流れる小沢がある。ここが、北鎌沢出合の登山口地点であった。ようやくスタートラインに到着。
腹ごしらえをして、先行したパーティーを追いかける。
右俣分岐で水を補給。徐々に先行者に追いつき、テント装備が重そうな数パーティーを追い越す。
沢状のけっこうな急勾配を進む。なかなか長くて、途中で1本とってからようやく北鎌のコルへ。ここまでの急登で、少し足に来ていた。これからが長い尾根の始まりだというのに、少し不安がよぎる。
テントが2~3しか張れない狭い場所に、12~13人が休んでいてやや窮屈。ここから尾根筋となり、さらに気を引き締めて登りにかかる。

独標手前のピークまでひと登り。目前には大きく聳える独標が、敢然と行く手を阻むかのように立ちはだかっている。
Kさんが直登ルートに興味を示し、ハイ松沿いを見定めていたが、「急勾配で怖いのでトラバースルートにしましょう!」と促す。
トラバースの入り口には残地ロープがあり、そこをくぐり抜けるとその先はしばらく歩きやすい。
かなり進んで険しそうになる手前で、残置シュリンゲが2箇所あり。奥の方はいかにも急傾斜で怖そう。手前の残置をKさんが登っていくと、大丈夫そうなので後に続く。
しばらくやや急な岩稜帯を登ると、先行者が右方向へ。それについていくと独標はすぐであった。
事前にUさんからもらったDVDのモデルが登ったコースと、ほぼ同じであったことを思い出す。

仲間の二人は独標のピークに来たかったようで、満足の様子だ。
狭いピークで、先行者と写真を撮り合い後続に場所を譲り、我々は先を急ぐ。
ここまで来るのにけっこう足の膝上や大腿四頭筋が痙攣気味で、何とかだましだまし登ってきた。痙攣してもある程度歩ける自信はあったが、まだ山頂まで長いので最後まで足が持つかどうかやや不安であった。
二人はバンバンに元気で、なんとかついて行くという感じであった。

独標を過ぎてからは、道は相変わらず険しいが勾配はいくぶん緩み、時折槍の穂先が見えるようになって来た。
ピークを越えるごとに槍が大きく見えるようになり、張り合いが出てくる。
振り返ると大きな独標の頂が、下方にどっしりと構えている。後続のパーティーも続々と登ってくる。
ピークを巻いたり登ったりしながら進むと、間もなく槍平の直下へ。直登も可能なようだったが、安全策を取り右から巻いていく。
途中で、槍・小槍・孫槍・ひ孫槍が見えた。槍ヶ岳に孫やひ孫がいたなんて全く知らなかった。
最後の斜面は大きな岩がゴロゴロした所を登り、左に少し戻って槍平に着く。前方には槍ヶ岳が聳えていて、ようやく射程圏に捉えることが出来た。

さあ、念願だった北鎌尾根の最終仕上げである。しかし、いったいどこから登るのか、急な岩場で恐ろしい感じ。はるか前方の先行者が左側を登っている。我々もそのルートをイメージしながら進む。
槍の基部に取りつく頃、先行パーティーに追いつき付いていく。かなり急な岩場の隙間を進むので、ほんとにこのルートでいいのかと、やや不安を感じながら登る。チムニー状の岩が出てきたが、まさか山頂直下のチムニーにしてはまだ早すぎると思い、右側に巻いて進んだ。ところがその先で間もなく山頂に着いてしまい、有名なチムニーを飛ばしてしまったことに気付く。残念だがまあ仕方ないか。

山頂の祠前で完登の握手を交わし記念写真を撮り下山。ああ、無事に登れて良かったと安堵感に浸る。
山頂や上り下りのルート上・肩の小屋の周辺等、どこも大勢の登山者でごった返していた。小屋前にて缶ビールで乾杯。聞くと、山頂往復2時間とのこと。前日の3連休初日は、午後3時に登って降りてきたのが午後6時だったという人もいた。恐ろしい混雑ぶり。槍ヶ岳山荘周辺のあまりの混みように驚き、当初ここで泊る予定だったが下ることにする。

ガンガン飛ばし横尾到着。ふかふかの布団一枚に一人だから快適。風呂には石鹸はないが、湯量豊富で気持ちいい。夕食のビールがうまいこと。
絶好の日和の中の北鎌完登の喜びが加わり、最高の気分に酔いしれる。これも経験者のKさん、設営していただいたUさんのおかげ。大変ありがとうございました。