2014/9/28 貸切りの山稜 会津 七ヶ岳

     黒森沢登山口 6:30・・・・山頂 8:40~9:30・・・・下岳11:00・・・・林道 12:20・・・・登山口 13:00
     メンバー : TH(記)、+1


七ヶ岳の存在は中学を終える頃には知っていた。
写真を見て、「八海山みたいだな」と勝手なイメージを抱いていた。
登ってみると、少し岩っぽい山体と藪の感じが似ていたようにも思う。
気になる山だったが、特に狙っていたわけでもない。

Mの名言「百姓山岳会は嫌だ。春秋のベストシーズンに山行を組みにくい」を思い浮かべながら、農作業が続いた9月、家人をなだめるために登った。

護摩の滝
9月末の快晴の休日だったが、人が居なかった。
紅葉の盛り。 簡単に登れる山。 なのに、単独行の男性1人と逢ったのみ。 それも、山頂で5分ほど一緒だったにすぎない。

貸切り状態の山だった。
前日に御嶽山の噴火があったとはいえ、あまりの静けさに不安さえ感じるほどだった。
まだ放射線量が高く、地元の皆さんは敬遠しているのか・・・と。

林の下と沢中を通る黒森沢沿いのコースは、たぶん夏は涼しく快適だろう(アブ害を除く)。 ただし、残念だったこともある。
メインの滝登りの部分には、これでもかと言うくらいに、色あせてくたびれた感じのロープが下げられ、少しオーバーに言えばソーメン流し状態。
景観への配慮もほしい気がする。

滝の部分は巻き道を使ったが、すぐに沢にもどる。
左岸に、前述のようなロープがずっと張られているが、あまり必要性も感じないで、階段状のスラブを登る。

ただし、一般ルートの下りコースともされているが、ロープがあるとはいえ、気軽に初心者にも紹介しているのには違和感がある。
下り始めて「しまった」と思い、肝を冷やす登山者もあることだろう。

黒森沢上部
「何でこんな簡単な沢を早く歩けんのだ!」 との苛々を押し殺し、「いつまでも待つわ♪」 と言うような “ じっと我慢の子 ”で、連れ合いを振り返りながら登った。

笹のトンネルを抜けた山頂直下で視界が開けると、スキー場の頂にデンと構える電波中継塔が激しく目ざわりだ。

一等三角点の山頂は、藪も低く眺望がほしいままであるが、残念なことに山の同定ができない。
判るのは、越後三山、平ケ岳、会津朝日から御神楽岳くらいまで。
磐梯や飯豊、日光、那須方面は、「○○山だろう」とは思うが、確信が持てずにもどかしい。
スマホを駆使すれば簡単に判るものと想像するが、生物学徒の私はガラパゴスを愛するので、それもかなわない。
せっかく、双眼鏡と50万図を持参したのに・・・。

七ヶ岳稜線
「七ケ岳の山稜をたどるのは時間を要する」というので、展望を無垢な心の印画紙に焼き付けてから、突起越えの道に踏み込む。
岩稜歩きという感じは全くないが、道脇の藪のグレードは高い。 「若くても、この藪は歩きたくない」という感じだ。
力を尽くして突破したとしても、代償に体中の引っかき傷の生贄を求められるのは必定である。

時おり足元に岩が出る峰歩きを約2時間で、下りにかかる。
下りは、疲れたという感覚を味わうほどもなく林道に出てしまうのだが、周囲の林が良かった。

下り始めの尾根には、ヒトツバカエデ(葉が全く切れ込まない楓)が多い。 その黄葉を透過した陽光が美しい。
その光の中を歩く妻もまた美しい――と綴ることができればよいのだが・・・。
ひと下りしてブナが目に入るようになると、真っ赤な実が道に落ちていた。

色づきがピーク時期のナナカマドだ。 10m程の樹もある。 こんなに背の高いナナカマドを見たのは初めてだ。
陽光に輝く紅の実が心に染みる。

林道歩きは、いつだってあまり好ましいものではないが、車まで戻る道は無粋だった。
周囲の景観も見るに値しないし、暑くて、埃っぽくて、歩きにくい。
ときどき、土煙を舞いあげてツーリングのバイクやジープが通って行く。
「林道はもう十分だ」と思い始めたころに車に帰り着いた。

10台程度は停められるスペースに、我が愛車のみ。 「時節の良い好天の名山に、なぜ登山者が居ないのだろう?」と思い続けた贅沢な秋の山を終えた。
「核心部は、車の往復」と心得ているので、連れと喧嘩しないように注意し、気を引き締めて帰路のハンドルを握った。