2021/9/13  疲れ切った「越後沢山」

コースタイム:十字峡5:20 内膳落合6:20 本谷山9:40 越後沢山11:45 丹後山登山道(8合目)
        15:30 栃ノ木橋17:00 十字峡17:20
   単独行:TH

当然に誰も付き合ってくれない道のない山なので、単独での入山。今年の宿題の一つでした。
無雪期の越後沢山の山頂には、1年で何人が立つのだろうか? 
3回目の頂ですが、道でも伐開されない限り、今後無雪期に登ることはないはずです。

刈り払いしたての本谷山を後にすると、かつての踏み跡は跡形もなく、全くのヤブコギでした。
1泊の荷物は持参しましたが、かろうじて15:30に丹後山の登山道に出て、日帰りできました。

ひとえに、案内の踏み跡のおかげです。後半の三分の一は、ほとんど全て先人の残した踏み跡を利用しました。
カモシカの道が、稜線と並行して群馬側の草付き斜面に続いていました。これを拾うようにして、
沢の源頭~尾根・藪を往復して、何とか登山道に出ました。

足はもちろん、上腕の筋肉がパンパンに張っています。

写真は、越後沢山と意外と大きく見えた富士山です。


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【記:TH  何十万本の笹を見ただろうか?  本谷山~越後沢山~丹後山
「体が動くうちに、もう一度あそこの藪をこざく」と決めてはいました。
しかし、かつての踏み跡が全く無くなっているだろうことは明らかだったので、なかなか実行に移せませんでした。
また十字峡から栃ノ木橋までの渓相は、10代のころから好ましいと思っていましたが、あの落石の巣のような林道は、
できれば歩きたくないというのが正直なところでした。しかし、年齢による体力減退が著しいと感じていたので、
今年の目標にしていました。刈り払いのある本谷山までに特記することは1点のみです。話には聞いていましたが、
ニホンジカの声を聞き、登山道で目撃したのです。それも千mを越えてから。生息することは知っていましたが、
高標高で見るとは思っていませんでした。

 本谷山の頂に立つ頃から少し雲が切れ始めましたが、陽射しがないと半袖では寒くてたまりません。
尾根は、ほぼ一直線に北の丹後山に続いています。道さえあれば、鼻歌交じりの稜線漫歩でしょうが・・・。
長袖シャツ、手袋、ヘルメットを着用し、息を吸い込んで「せーのっ!!」という感じで、
笹やぶに飛び込んで泳ぎ始めました。丹後山までは、ずっとかなりの藪です。笹の密度も高く、
所々に交じるナナカマド、ミズナラ、シャクナゲなどの枝は、ひねくれて絡み合い、非常にキビシイ。
場所によっては、クロヅルが混じって本当に嫌になる。ヤブコギで最も嫌いなのがこのクロヅルだ。
いつも「剪定鋏が欲しい」と思わせられる。加えて、ヤブに引っかかって頻繁に靴ひもが解けてしまう。
荷を背負いながら紐を締めなおすのは、結構大変だ。「頭は禿げる為にあるのではない」は私の口癖だが、
ヤブコギで靴紐が解けない工夫は無いものか? 誰か、スパッツを着ける以外の方法を教えてほしい。

 この稜線のうちで、本谷山から越後沢山にかけては、稜線が細い場所がある。そこには、ごくわずか、
かつての踏み跡が残っていた。細いので風が強いのだろう、藪の背丈も低い。踏み跡がなくても展望は効くし、
脚の力だけでも進むことができる。しかし、越後沢山を越えると、稜線通しに歩くには平泳ぎのスキルが必要だ。
両手でヤブを分けないと、前に進めない。ヤブの背丈も高くなり、木に登って先を見ようと思っても高い木がない。
いつものことだが、「ヤブコギの山」に来たことを激しく後悔する。滑って転んでも、尻は地面に付かずに笹の上だ。
泣いても、自分を恨んでも、突破する以外の選択肢はない。「こんちくしょう!」と、また藪に突入する。
ずっと横綱の張り手を受け続けている感じなので、顔が険しくなる。ずっと険しい表情でヤブと格闘していると、
顔の筋肉が疲れてくる。できるだけノンビリした表情を保つように努める。

 ヤブの感じは以上の如くです。稜線を辿ったのでは、水のないササやぶの中で、
泣きそうなビバークをする羽目になったことは確実です。後半は、ずっと群馬側の草付きに続いていた
カモシカ道を辿りました。非常に合理的に、安全で歩きやすい場所に、稜線と平行して彼らの道が続いていました。
蹄で踏んだステップは歩きやすく、とても助かりました。所々に彼らの寝た(休んだ)跡がはっきりとわかります。
最初から、この踏み跡を辿ることに決め、スリップ防止用のアイスハンマーなどを持参すれば、
十分に日帰りが可能です。もちろん、そこそこ山に慣れた人が、1泊の準備をしたうえでのことです。