2022/3/13   谷川岳マチガ沢東尾根冬季登攀

メンバー:HS、NY

コースタイム:谷川岳RWベースプラザ4:00 ~ 谷川岳登山指導センター ~
       マチガ沢出合 ~ 一ノ倉沢出合5:30 ~ シンセンのコル7:10 ~
       第二岩峰 ~ 観倉台 ~ 第一岩峰9:30 ~ オキの耳10:00~
       西黒尾根下山 ~ 谷川岳登山指導センター12:10



一ノ倉沢出合
一ノ沢取付き
シンセンのコルから
第二岩峰と先行パーティ
一ノ倉の岩峰
雪庇のトラバース
岩と雪のミックスルート
クライムダウン
胸を付く傾斜とクレバス
クレバスを這い上がる
ドローンショット1
ドローンショット2
振り返ると
観倉台から
第一岩峰手前の雪稜
頂上直下最後の登り
国境稜線からルートを見降ろす
谷川山頂オキの耳




【記:NY
   Salt Of The Earth
   すばらしき山 たいせつな仲間と

一緒に行ける機会は多くないよね。
この日も前日お互い土曜の夜遅くまで働いて、ろくに眠らずに向かっていたね。

思えばきみとはいつも眠気と闘いながら山に向かっていた記憶ばかりだよ。
時には家族に疎まれながら。

そんな思いをしてまで、なぜ僕らは山に行くのだろう。

効率と利潤に明け暮れる日常。基本的な社会正義や真っ当な勤労精神さえもが、
いわれのない偏見や中傷にさらされるこの時代。
そんな世の中でもきみは昔も今も凛としていきている。
きみのまわりにはいつもすてきな仲間がいて、清廉で涼やかな風が吹いているようだよ。
まるで山そのもののように。

この日の谷川もそうだったよ。

ありがとう。
また明日から懸命に働く意欲が湧いてきたよ。

懸命に働くからこそ山が楽しい。
当たり前の事実に気づかせてくれる大切な仲間、すばらしい山に巡り合えた
僕は果報者なのですね。

♪Let’s drink to the hard working people♪

若すぎて気づかなかったこの歌の意味もわかりかけてきたよ。



【記:HS
 どこの山が一番好きかと聞かれると迷わず谷川岳と答える。
冬の谷川岳に足を運ぶ様になって数年が経つ。雪をまとった谷川の姿が大好きだ。
以前はバックカントリーで滑る事が楽しかったが今は登る事が楽しい。
数年前の6月頃に初めて東尾根を単独で登ったが、凄い景色に圧倒され記憶に残る登攀だった。
それからは冬期の西黒尾根を登りながらも東尾根に張り付いているパーティを羨ましく眺めていた。
数年前から冬季登攀の思いはあったが今一つ自身が持てず、なかなか実行出来ずにいたところ
雪稜経験豊富なNYさんが付き合ってくれる事になり、本格的に計画を練り始めた。
雪稜登攀の経験が浅い私は装備一つ取ってもこれでいいのだろうかと不安だったが、
心強い仲間を得て気持も幾分軽くなった。

4:00 谷川ロープウェーベースプラザの駐車場からヘッドライトの灯りを頼りに歩き出す。
少し歩き登山指導センターに計画書と登山届を出し、ここから雪の上にあがる。
真っ暗な中でも他のパーティの灯りが前も後ろも見える。
約一時間半で一ノ倉沢の出合に到着、少し進んだ所で休憩し登攀装備にアイゼンを着け、
手にはアイスアックスとピッケルを持った。
空もしだいに明るくなり取付きの一ノ沢中間部に先行パーティが見える。
途中で氷瀑を登るクライマーの姿もある。東尾根シンセンのコル目指し激しい急登に息が上がる。

7:10 出合から約一時間半で尾根に立ち、進行方向はこれから向かう第二岩峰が構えている。
朝食を食べながら休憩をとり、他の2パーティと挨拶を交わす。
岩峰の登りは岩と雪のミックスルートで垂直に近く両脇は切れ落ちているので慎重にアイゼンを岩に引っ掛け、
ピッケルを雪壁に刺す。落ちたらどこまでも転がっていきそうだ。
体を押し上げて上部の硬い雪にアイスアックスを差し込み、それを頼りに体重を掛けて這い上がった。
以前春に登った時もここはカラビナを使い自己確保で通過した所だったのでなかなかシビレる箇所だが面白かった。
岩峰上の雪と岩と草付きの痩せ尾根を通り大きな雪庇を一ノ倉沢側にトラバースで進む。
次は雪壁に深くピッケル刺し谷側にクライムダウンして岩陰に降り、回り込んで再び雪庇のトラバースで
高度を上げて行く。胸を付く傾斜もアイスアックスが効き楽しい。

向って右側は一ノ倉沢の岩峰が見え素晴らしい景色だ。前方には大きなクレバスが見える。
一番大きなクレバスは雪庇を下から崩してルートを作ってあったが、まだまだキツい傾斜は続き
クレバスもいくつか出てきた。最後のクレバスは気温が上がり雪が緩んで崩れてくるのでなかなか難しく、
他のパーティと協力して雪庇を崩しルートを作り直しクレバスを越えた。
この急斜面を登り終えると再び雪庇のトラバースがあり第一岩峰へとつながる。
第一岩峰はクライミングで越えるパーティも多いが岩稜でのアイゼントレーニングをしっかり積んでいないと難しい。
今回は一ノ倉沢側に巻いて通過したが次は登ってみたい。

いよいよ山頂も近づき素晴らしい景色が続く。安定した場所もあり時間も予定よりかなり早かったので
ドローンを飛ばしながらこの場所に来れた喜びに浸った。
山頂手前最後の急傾斜の先には大きな雪庇が張り出し今にも落ちてきそう。
本来なら右側からダイレクトでオキの耳に登り上げるルートだが、この時期はまだ雪庇があるため
左にトラバースして雪庇の下を抜けて国境稜線に登り上げた。

10:00 先に抜けたNYさんが握手で迎えてくれて感動も一入であった。
山頂でも同ルートを登った山男達が握手で迎えてくれた。
念願の冬季東尾根を完登出来た事は仲間と許可をくれた家族のおかげだ。
感謝と感動を噛みしめながら西黒尾根の白い雪稜を降りた。
ますます谷川岳が好きになった。