会山行 頚城焼山 ―北面台地末端イグルーから焼山ピークハント 

メンバー:(L)OS.(SL)KN.(記録)mal.(会計)IT

コースタイム:2023年4月9~10日(日月・1泊2日)
      4月9日 笠倉温泉先(8:45)~アマナ平(11:00)~北面台地展望台(12:12)~
          イグルー建設(12:30~15:30)・・・落成式・・・着床(19:00?)
      4月10日 起床(4:00?)BC発(6:00)~大曲(7:14)~おはち(10:25)~
          焼山山頂(11:00~11:25)~BC帰着・撤収・下山開始(13:30~14:00)
          ~アマナ平(14:42)~笠倉温泉(17:00)




「山の記」mal
 頚城の山には3度しか来た事が無い。
小滝の保育所(今は無い)の園庭から見えていたのが明星山と知ったのは20年後くらいだっただろうか。
初見参の頚城焼山、単純に登った事が無かったから・・・おんぶに抱っこの山行だったと正直に白状する。

4月9日日曜日晴れ
前日の降雪が伸びかけたフキノトウを埋めていた、桜は満開直前で満を持している様子。
駐車している10数台の車、山スキーヤー以外は我々4人と単独行だけの様である。
橋を渡り、雪を踏む、車道沿い歩きショートカットで杉林を抜けたり先行者のトレースを拾う。

アマナ平に着くころには山スキーヤーがヒラヒラと滑り下ってくる、もうひと登りで・・・
いやふた登りで漸く北面台地に辿り着く。一気に視界が開けた奥に荒々しい焼山の姿が飛び込んで来た、
異口同音に「日本ならざる景観だ!」・・・と(異国を知らぬ者は口を紡ぐしか無い)確かにそんな気もして来る、
此処をベースして色んな遊びが出来そ!

一息入れて、今回の山行目的①「イグルー作り」に取り掛かる。
この日の為に新調した「スノーソウ」を試行錯誤しながら作業は進む・・・
快適な一夜を過ごす為には労力を惜しんでは成らない、メンバー全員が「(イグルーは)初めてなので・・・」が
「初めてにしては〇○〇出来だ!」・・・に変わるか?
残念ながら天井が閉じそうもない事に気づいたのは一時間半程後、天井はツェルト張り採光天窓に変更、
イグルー内は怪しげなオレンジに染まった。・・・となれば、4人車座になり早々に「落成の宴」となる。
19時(?)着床・・・・もちろん快適な一夜であった。

4月10日月曜日晴れ
4時(?)起床。宴のキムチ鍋にうどんやら何やらトッピングし朝飯とする。
放射冷却でクラストした雪面にツァッケが心地良い、大曲から少しずつ傾斜が増してくる。
山行目的②「アイゼン、ピッケルでの確実な登下降」が始まる。アックスに依る自己確保、
フラットフィッティング、タガーポジション、ピオレトラクション、フロントポインティング、
ピオレトラクション・・・場面に応じた技術を適切に駆使し、安全かつスピーディな登行が可能となる。

ルートファインディング・・・自分の力量と兼ね合い、パーティー登山の場合はパーティーの力量と兼ね合い。
見た感じ傾斜を増す雪面を直上し岩壁基部から左右どちらかに雪を繋いで登れそうに見えた・・・
気付いた時メンバーは右の離れた所に居た「こっちだぞー」の声も聞こえたがまだまだ直登出来そうに見えたが
・・・チームワークを乱してはいけない(既に乱している⤵)2000M付近で合流、此処は尾根を直登かと?
ヤバそうなトラバース滑りだせば止まらないな200Mの滑り台を右上!

尾根状を登るが左手のルンゼ内にルートが取れそうだ、ルンゼを登り切って「おはち」へ、
はちの底へ下り再び雪面を登り夏道と合流、雪は無くアイゼンはデポし登山道を山頂へ至る。(11:00~11:25)
北アルプス:爺ヶ岳・鹿島槍・五竜・唐松岳・剱岳・白馬三山。青海黒姫海谷山塊:昼闇山・阿弥陀岳・
雨飾山・高松山・黒姫山・飯綱山・高妻山・堂津岳・火打山・妙高山・・どれがどれやら、
とにかく見晴らしのいい山頂である。

下山ルートは「おはち」からルンゼを下り切って岩壁基部をトラバース、藪っぽい尾根を下降。
ヤバイ雪壁の下降はせずに済んだ。少し緩んだ雪面をザクザク下る。大曲手前でアイゼンを外しBCへ向かう。
雪洞なら潰さねばならぬが、イグルーなら大丈夫だろうとそのまま残す、下山開始(14:00)。
malがバテ笹倉温泉到着(17:00)予定を1時間遅れた。

あとがき
山は何時も求めるものを与えてくれる・・・が、欲張ってはいけない身の程をわきまえ
身の丈に合ったものだけにしたい(もう伸び代が無いかもしれないが)身の丈を保つことを心掛け、
山に向かいたい。2日間山の神様と、頼もしいメンバーに助けられ素敵な時間を過ごせありがとうございました。



記】OS
積雪期の焼山北面台地には、ヨーロッパアルプス(行ったことはないが)を彷彿とさせるような、
広大で雄大で無限大な空間が広がっている。その背後には、衝立のようにどっしり構えた火打山と、
見るからに火山らしく頭からけぶの出る焼山の両名峰が聳え、裾野から競り立っている。
それらが運良く前日の降雪で、純白にデコレーションされたのだから、
山好きには堪えられないロケーションであった。

そのような台地の末端にイグルーを造って泊まるなどという贅沢極まりない計画は、なんて素敵なんだろう。
日帰り山スキーヤーの自分には、誠に斬新な発想であった。軟弱テント泊の幕営を完了してから、
イグルー建設に参戦させていただいた。しかし、徐々にすぼめるのが難しく、天井を塞げなくて、
難易度が高いことを思い知らされた。切り出し~積み上げ~間詰め作業と、真剣に没頭し過ぎて喉が渇き、
酒が飲めないかと思う程くたびれた。

そして、大きな明かり取り天窓のある半ドームの中で、至極の宴席を迎えるのであった。
なんと乾杯酒はIKEDAさん提供、KNさん荷上げの4合瓶よりひと回り大きいスパークリングワインである。
重労働の後のパンチの効いたワインの旨いこと旨いこと。喉の潤いが半端無い。
MTシェフの絶品鍋料理に舌鼓を打ちながら、笑い声が北面台地の隅々までこだまして、
楽しい夜は更けていくのであった。ホッカイロを忘れてしまい眠れるか恐怖だったが、程良く撃沈できた。

4人占めした台地の朝は、焼山の朝焼けから始まった。なんて贅沢な空間なんだろう。何十万円出しても、
こんな絶景地には泊まれないだろう。焼山アタックに際し、KNさんとは一番右側の傾斜の緩そうな
雪渓ルート取りの作戦を練っていた。しかし、沢が意外に深くて、右から2番目の雪渓を直上することに
軌道修正。部分的には急傾斜のトラバースもあったが、グリベルのロング12本爪は、どんな急斜面でも
登れそうな程、安定感・斜面捉え感が抜群であった。

最後の詰めは意外とらく~に気持ちよ~く登れ、お釜の縁に到着。山頂は風が強く、冬用アウター・
手袋でも寒かった。まだ真冬の様相を呈する北アルプスの白く連なる峰々は、圧巻と言うしかない。
眼前の頚城の名峰の数々と共に、退化しつつある脳裏にしっかりと焼き付けて山頂を後にする。

急斜面の雪渓下降には、やや身構えて立ち向かったが、案外と楽なルート取りができて、
難なく危険地帯を通過。今度は暑さがジリジリと照り付けてきて、安全地帯のダケカンバの木陰に避難して休憩。
振り返って焼山の迫力ある山容を仰ぎ見ると、ジワジワと満足感が湧き上がってくる。
天窓付きイグルーとこの世の楽園、北面台地に後ろ髪を引かれる思いで別れを告げる。

何回歩いてもわかりづらい複雑地形に頭を悩ませながら、桜満開の駐車場に無事到着。
4人で熱い握手を交わしてお互いの健闘を称え合い、楽しい焼山会山行が閉幕した。
ここだけの話しであるが、黄砂が無い澄みきった青空の二日間を与えてくださった神様と、
苦楽と絶景空間を共にできた仲間に心から感謝したい。



記】IT
日本の景色とは思えない程の広大な雪原とどっしりと立つ焼山。最高のロケーションの丘に、
皆んなで力を合わせて初めてのイグルーを作った。スノーソーでの雪のブロック作りは面白かったが、
それを積み上げるのは労力を要した。malさんが職人級の腕を発揮して少しづつハングさせてゆく。
しかし、大きすぎて中々天井が塞がらない。

最後はツエルトで天井を覆ったら素敵なオレンジ色のドームが出来あがった。皆んなで作った皆んなの家、
Kさんがビンごとザックに入れて来たシャンパンで完成を祝った。
初めてのイグルーの中で豪華な鍋をつつきながらの宴会は最高でした。
もちろん焼山も素晴らしかった。凍みた急斜面の登行はかなり緊張したが、
山頂から見る北アルプスの峰々と富士山。真正面に立つ火打山。青い海。
スケールの大きい景色に度肝を抜いた焼山山行でした。



記】KN
どこか日本離れした景観の頸城山塊、、焼山北面台地に泊まったら素敵だろうなぁという思いから
計画が始まった。MTさんからイグルーを作ろうよ!と提案があり、
スノーソーを会装備品として購入していただいた。

笹倉温泉上の駐車場から辛うじて繋がっている林道を歩いていくと純白の焼山が圧倒的な大きさで迫ってくる。
そして北面台地に登り上げると限りなく広がるロケーションが出迎えてくれて、みんなで歓声を上げた。

いよいよ初めてのイグルー作り、、ちょっと大きく作り過ぎたみたいで途方に暮れる場面もあったが、
少しずつコツを得ていく。内部の広さは十二分で楽々立てる高さも確保できた。天井は強度を考慮して
敢えて塞がずストックで補強してツェルトを被せた。そこから陽光が透けてまるでステンドグラスのよう。
時間と労力を要したけれど、みんなで協力し合って作ったイグルーはなかなかの出来だ。
美味しいお酒と鍋を頂きながら過ごす時間はプライスレスと言うほかない。
外に出ると茜色の空に星が輝き綺麗だった。夜は寒さを感じずによく眠ることが出来た。

翌日は焼山へ、、スケール感がわからなくなる程広い北面台地を登っていくと徐々に傾斜が増してくる。
ストックをピッケルに持ち替えルート取りを考えながら慎重に進む。硬いアイスバーンの登行はかなり緊張した。
一歩一歩とにかく確実に!と集中する。

火口部で一息ついてひと登りすると、北アルプスの白い峰々が出迎えてくれた。360度見渡す限りの大展望に
またみんなで歓声を上げた。山頂部の風は冷たくて、まだ高い山は冬なんだなと感じさせられた。

下りも慎重かつ確実な歩行を心がける。より安全そうなルート取りをして、無事に下りることが出来てホッとした。
何度も何度も振り返り、焼山のどでかさを感じながら帰りを待ってくれたイグルーに戻った。